つり人別冊 Tight LOOP

なにやらSNS上じゃ「7day book cover challenge」ってのが流行ってたらしいですね。

外へ遊びに行きにくい今こそ本を読もうってなコトの流れなんでしょうか。

かくいう自分も昔読んだ本を改めて読み返したりしているので、流行りに乗って7日間、フライ関連の本、雑誌でも紹介したいと思います。

このSNSバトン、元々のルールじゃ表紙画像のみの紹介で本の内容は書いちゃダメらしいですが、まあそれはそれ、これはこれってことで。

また、フライ関係の本は残念なことに廃刊や絶版になりやすようで、入手しにくいかもしれませんがあしからず。

 

レネ・ハロップにレイジェフ兄弟。錚々たる顔ぶれが並んでいます。

最初は別冊つり人「Tight LOOP」のご紹介。

フライフィッシャー誌の出版元つり人社から、年2~3冊のペースで出されていたムック本です。

 

第一号の発刊は1998年。

今は無き地球丸のフライロッダーズが創刊された年でもあり、フライ人気に勢いがあったのかな。

しかしながら、前年の山一證券、拓銀の破綻をきっかけに就職氷河期が始まった年でもあり、目に見えて日本の衰退が始まった時代でもあります。

そんな時代背景の影響があったのかどうか、最後の発行は2001年、計11冊で休刊となっています。

 

このタイトループのテーマははっきりとして明確です。

「世界と日本を開いた円環、LOOPで結び積極的な交流ツールとすること」

第1号の発刊の言葉に記された一文です。

その言葉通り、フライに関する世界の最新事情を紹介する誌面作りとなっています。

横書き左綴じという冊子形態も英語圏を意識させるもので、実際に記事の著者の多くは外国人であり、内容も海外の釣りが中心でした。

 

一番好きな号。眺めてるだけで夢が膨らみます。

内容はどの号も非常に濃い。

レネ・ハロップやトム・モーガンなど、フライ歴の浅い僕でも知ってる著名人が多々寄稿していますし、海外遠征を目指している人にとっては役に立つと思われる興味深い記事が多いです。

この1冊を作るのにどれくらいのコストが掛かってるんだろと余計なことが気にかかるほどの充実っぷりです。

 

また、目指すところも非常に賛同できる部分が多く良かったと思います。

放流して1週間で全ての魚が抜かれてしまうようなレギュレーション後進国の日本に海外の文化を紹介することで、少しでも良い方向へ変革が起きたらどれほど良かったことか。

残念なことに現状は当時から何も変わらないまま。

マイノリティーのフライフィッシャーの声は大多数の釣り人擬きの漁師の耳にはなかなか届きませんね。

 

タイガーフィッシュのフライフィッシングに興味のある日本人がどれくらいいたんだろ。

ただ、タイトループ誌がその充実した内容に反して短命に終わった理由として、時代的な不遇もあったとは思いますが、やはり内容的に万人向けとは言えないものだったのが大きいかなと思います。

 

まず自分が気になったのは、記事の大部分がトラウト関係だったこと。

当時は今以上にフライ=トラウトだったことは想像に難くはないですが、せっかくソルト先進国のアメリカ文化を紹介するなら、もっと鱒以外の特集があっても良かったんじゃないかと思いました。

新しい海外のフライ事情を紹介することを目指したメディアなら尚のことです。

 

しかもトラウトとは言っても、あちらさんでのメインターゲットはニジマスとブラウン。

当然、誌面もそれらの魚を中心とした構成にならざるを得ません。

タイイングにせよフィールドテクニックにせよ。

ヤマメ・イワナが絶対的な中心である大多数の日本国内読者のニーズとは微妙にマッチしないわけです。

情報を応用して自分の釣りに取り入れられるエキスパートならともかく、直接的で実践的な内容を求めるフライフィッシャーの購読対象から外れていったのではと思われます。

もちろんそういう読者層のために同じつり人社のフライフィッシャー誌があったわけですが、今のフライ人口から推測してもエキスパートのみをターゲットとした本では商業的に厳しくならざるを得ないでしょう。

  

しかしながら、あれほどの内容の本が1000円ちょっとで売られていたことは今現在からするとちょっと信じられません。

テクニック、ハウツー的なところは深く理解できない僕でも、読み物として面白かったのでバックナンバーを全号揃えてしまいました。

古い本ですが、今でもネットを探せば手に入ると思うので、まだ読んだことのない方はぜひ。