近年、人気のクロダイのフライフィッシング。
サイトで狙うにせよブラインドで探るにせよメインシーズンは夏。
寒くて北風の強くなる時期はオフかと思ってましたが、もしかしたら冬でも狙える可能性があるかも。
ただし、手放しで歓迎できる話では無いかもしれませんが。
東京湾内房に広がる浅瀬は、海苔の一大生産地です。
その海苔の生産量が年々落ちているとのこと。
その一因がクロダイの食害と聞いた時は、そんなわけないだろってツッコミを入れてました。
この地域の海苔養殖の歴史は江戸時代から続いてます。
クロダイだって前からいたし、海の豊かさなんかを考えたらむしろ昔のほうが多かったのでは。
生産量が減っているのは、海水温上昇のせいで海苔の生育に適さないエリアになってしまったに違いないと思ってました。
しかし、百聞は一見にしかずで、実際にクロダイが海苔網に群がっている映像を見たら食害を認めないわけにはいきませんでした。
今では海苔ヒビの周りをクロダイ避けのネットで囲んでいるそうです。
その費用はバカにならないはずで、これを機に廃業した海苔漁師も多いとか。
呑気な話ですが、海苔ヒビ周りの浅場に冬でもクロダイが回ってくるのがわかったので、釣り人的には狙ってみたくなります。
海苔フライなんてパターンで釣ることだって可能性はゼロではないかも。
でも、なぜこんなにもクロダイが増えているのか。
これは東京湾に限ったことではなく、瀬戸内海や今やサイトフィッシングの聖地となった浜名湖でも同様で、牡蠣などの養殖業に被害が出ているとのこと。
原因を調べてみたもののはっきりしたことは分かりませんでしたが、おそらくは気候変動、温暖化の影響が大きいと思ってます。
水温上昇による環境変化に加えて捕食者まで増え、各種養殖業にとっては厳しい状況なのは間違いありませんね。
ちなみに、内房エリアは潮干狩りでも有名ですが、天然のアサリはほぼ全く取れなくなりました。
増えたクロダイなどの食害も一因に挙げられていますが、それ以外の要因の方が大きいでしょう。
アサリがいなくなったおかげで漁師が干潟を掘らなくなり、一面、アマモが広がる状態となっています。
アマモは「海のゆりかご」なんて言われるくらい稚魚の生育に欠かせません。
高度成長期と比べたら水質も良くなってるだろうし、東京湾の生態系は一昔前より豊かになってきていると言えるのかもしれません。
ただし、その生態系は以前とは異なるものです。
子供の頃、投げ釣りで狙っていたカレイやアイナメは全然釣れなくなりました。
その代わり東京湾にいなかったギマやトラフグなんかが掛かるように。
タチウオは周年釣れるようになったし、ワラサやブリ、サワラが湾奥まで回ってきて秋から初冬の人気ターゲットになってます。
東京湾の生態系は、ここ数年ではっきりと変わってしまった印象です。
単純に釣り人目線で見たら嬉しいことも多いんですが、とても手放しで喜べる状況でないですよね。
北海道からサケが消える、なんてことも起こりうるわけで。
「気候変動に具体的な対策を」。
釣りには電車で、なんてのはどう転んでも無理ですが、できる範囲で取り組んでいかざるを得ないかな、と。
近場でクロダイの冬パターンを開拓するってのは、ある意味、なかなかいい対策かもしれません。