フライラインは複雑です。
フライフィッシングを始めようとする人にとって最初のハードルはここでしょう。
DT-3、WF-5F、STなど、並ぶアルファベットと数字に戸惑う初心者は多いはず。
でも、この辺りは入門書やメーカーサイトなどで詳しく解説されています。
一旦理解してしまえばさほど悩むことはありません。
問題はそれだけではないことです。
WF-6Fを例に挙げてみます。
春の湖でドライフライで狙う場合も、夏の奄美でクロダイを狙う場合も、WF-6Fのラインで狙えます。
でも、「同じ製品」をどちらの釣りでも使った場合、一方のフィールドではかなりストレスを感じることになるはず。
フライラインの選択には番手とテーバー以外にも考慮しなくてはいけないことがあります。
自分の場合、冬のライトソルトゲーム用のフローティングラインが欲しいと思った場合、どんなラインを使えば良いのか迷いました。
そこで、海用フライラインを選ぶ際、検討が必要な要素を挙げてみました。
ソルトウォーター用とフレッシュウォーター用
ソルト用ラインは、大きくて重いフライを投げやすいフロントヘビーなテーパー設計になっていることが多いです。
素材については、海水の塩分でもベタつきにくいものが使われていたりします。
当たり前すぎて何言ってんだってなると思いますが、海ではソルト用、渓流や湖ではフレッシュウォーター用というのが前提。
ただ、モノゴトはそう単純ではありません。
サイエンティフィックアングラーズやRIOなど、アメリカのラインメーカーが作るソルトウォーター用ラインの多くは、南の島での使用を想定されて作られているものが多い。
ターゲットはボーンフィッシュやパーミットあたり。
そのため、ソルトウォーター用ラインの多くはトロピカルタイプと呼ばれる、熱帯の暑さでも柔らかくなり過ぎないよう硬めに作られたものになります。
ソルトウォーターだからと、それを日本の寒い冬の海で使ってしまうと、硬くなってクリクリについた巻きぐせがなかなか取れずに非常にキャストしづらくなる。
なので、冬の海フライではコールドウォーター用というのが必要となります。
コールドウォーター用とトロピカル用
トラウトのフィールドはほぼ例外なく冷水域なので、わざわざコールドウォーター用と明記してあればソルトラインです。
その名の通り、寒く冷たい中でも適度な柔軟性が保たれます。
ちなみに、コールドウォーター用のラインを熱帯で使ったらどうなるか。
柔らかくフニャフニャになる上、ライン表面のコーティングがベタベタになり、かなり投げにくくなるとのこと。
なので、やっぱり適材適所の使い分けが必要になります。
では、具体的にどれくらいの気温、水温を目処に使い分けたらよいのか。
サイエンティフィックアングラーズのサイトに参考になる表がありました。
これによると60℉、摂氏に換算すると15℃前後がカットオフ値になるようです。
思ったより低い印象。
夏場の海はほぼトロピカルタイプ一択ですね。
そして、冬の釣りでは当然コールドウォーター用。
ただ、このコールドウォーター用は種類が非常に少ない。
特に、低めの番手のフローティングラインはほぼ皆無に近いです。
メーカーが想定するターゲットとしては、ストライパーやレッドフィッシュあたりでしょうか。
ニーズに応えるには高番手だけでよいわけで、6番以下のコールドウォーターラインというのはほぼありません。
RIOであれば、「アウトバウンド ショート」シリーズに、唯一、WF-5Fからのラインナップがありました。
ただ、このシリーズは純粋なソルト用ではなく淡水兼用を謳っています。
SAもエアフロも6番以下のフローティングはなく、あるのは7番から。
まあ、日本でも寒い中、フライでメバルやアジを狙っている人なんてごくごく少数ですし致し方ないでしょう。
アジングなんてルアーじゃ大人気のジャンルなんですけどね…
現実的には、メバル用に低番手のフローティングラインが欲しいとなったらフレッシュウォーター用を使わざるを得ません。
そうなった際、ネックとなりそうなのは海水のベタつき問題。
ただ、これはテクスチャード加工がなされたラインを使えば対応できそう。
テクスチャードとは、ゴルフボールのような凹凸をつけたもので、ブランクへの接点が減るため摩擦抵抗も減ると言われています。
SAのラインナップでは、アンプリチュードやウェーブレングスがあります。
さらにこれにフッ素コートスプレーで更なる摩擦低減と撥水性向上を施せばだいぶベタつきは解消されるんじゃないでしょうか。
コールドウォータータイプが少ないのは、ラインの進化の現れかもしれないですね。
色々なターゲットに手を出していればどんどん増えてくるフライライン。
海と淡水を兼用するようにすれば、ちょっとは数を減らせるな。