なんとなく感じてたけど、フライフィッシャーというのはどうやら抒情的な人種が多いようです。
フライ関連の本の表紙に「ライフ」「人生」という文字が多いことからもそのことが伺い知れます。
でも同じ釣りでも、フライフィッシング以外でそんな話はあまり聞かない。
「磯釣りと人生」とか「エギングと人生」とか。
鮎やヘラはもしかしたらあるかもしれないな。
でも、生活と釣りが直結しててまさに人生がかかっているバスプロでさえ、どうすれば大きな魚をたくさん釣れるかを書くことはあっても、バス釣りとは何かで一冊丸々語っている本を僕は知りません。
バカがつくほど釣りに熱中している人は間違いなくそこに人生を捧げちゃってますが、語る内容の方向性がジャンルによって異なるのは興味深いところ。
海フライの本3の著者、中馬さんが人生をフライフィッシングに捧げてきたことに疑いの余地はありません。
しかしながら、海フライの本3には心象的な描写など一切なし。
極めて実践的な内容オンリーになっています。
釣り場に通いつめることとそれを記録した釣行データの重要性。
数を釣ってこそ見えてくるものがあること。
そのために何をおいてもキャスティングをマスターすること。
どんな練習が必要で、どんなフライ、どんなタックルがあればいいのか。
事細かに記載されています。
元々は「フライの雑誌」で連載していた「悩まないフライマンたちへ」をまとめた本誌。
現在は「もっと釣れる海フライ」に記事タイトルは変わったようですが、観念的な記事が多数を占めるフライの雑誌の中で、異彩を放ちつつも長期に渡って連載を続けられています。
毒舌的な文体ということもあり、内容に賛否あって当然ということは著者ご本人も承知の上でしょう。
自作のラインバスケットがカッコ悪いと言われていることなど自嘲的に書かれているのを見たことがあります。
でもフライフィッシングを始めたい人にとって、本当に欲しいのはそういった実用的な情報なんですよね。
初めての1匹釣らないことには、どんな言葉で素晴らしさを語ったところで伝わりっこないですから。
いささか様式美に囚われすぎに思えるフライ業界に欠けていて、必要なものがこの本の中にはあると思います。