ジェネティックハックルの雄、ホワイティング。
現在では買収したヒーバートも含めハックル市場で高いシェアを占めており、タイヤーでここの製品を持っていない人はいないと言っても過言ではありません。
ただ、ホワイティング社が発売している製品は多数あるので、それぞれどういった特徴があるか調べてみました。
ホワイティングファームの歴史
その前にまずは現在の製品群を誇るホワイティング社に至った経緯から。
1965年に養鶏を開始したヘンリー・ホフマン氏が立ち上げたホフマン・ハックルが、ホワイティングファームの起源です。
往年のフライフィッシャーにとっては、ホワイティングよりこちらホフマンのほうが馴染みがいいようですね。
1989年、ホフマン氏はトム・ホワイティング博士に生産権利を売却。
ホワイティング博士は、コロラド州にホワイティングファームを設立し、ホフマン氏の指導を受けながら本格的なフライタイイング用の鶏の飼育を開始しました。
1989年の設立当初は5000羽だった収穫が2000年には12万5000羽まで増えるなど、ホワイティングファームはわずか10年で急速に拡大していきます。
1997年にホワイティング社はヒーバート/マイナーを買収。
ヒーバートは、ハリー・ダービー氏が生み出し、アンディ・マイナー氏が作り出した系統に由来するハックルで、メッツ、コリンズ、キーオも同系統に含まれます。
ホワイティング博士はヒーバートの改良にも着手し、その特徴でもあった色合いや艶、透明感はそのまま残しつつ、ストークやファイバーのクオリティを格段に向上させます。
そして現在では、アメリカン種とスペイン原産のコック・ド・レオン種の改良も進めています。
それら多種多系統の鶏種を取り入れたホワイティング社は、スペイハックル、ハイアンドドライ、レッドXやヒストリックケープなど多様な製品群を生み出すに至っているのです。
ホワイティング ラインナップ
2019年の時点でホワイティング代理店マーベリックにあるラインナップは下記の通りです。
- ホワイティング Whiting
- ヒーバート Hebart
- アメリカン American
- コックデレオン Coq de Leon
- スペイ Spey
- ブラマ Brama
- ヒストリック Historic
- ハイ&ドライ High & Dry
- 4B
これらの製品群のうち、今回はドライフライ用のものに的を絞って紹介していきます。
また、各製品にはそれぞれルースター(コック)とヘンがありますが、こちらもドライフライ用を中心に考えてルースターについての記載となります。
ちなみに、ホワイティング社では、「コック」という名称は、俗語がアレなんで「ルースター」と呼んでいます。
WHITING
まずは社名を冠した「ホワイティング」。
通称赤ラベル。
ホフマン時代から続く伝統のドライフライハックルで、もっとも人気があるシリーズです。
特徴として、他のラインよりストークが長く柔らかい、ファイバーの密度が高いといった点があります。
また、ミッジサイズのハックルも多く、個体差による品質の違いも少ないといったことも人気のある一因と思われます。
グレードはシルバーが頂点で、以下、ブロンズ、プログレードと続きます。
HEBERT
続いて「ヒーバード/マイナー」。
通称緑ラベル。
ナチュラルカラーの美しさ、バリエーションの豊富さが最大の魅力となっています。
1枚のケープに生えているハックルの数、ファイバーの密度はホワイティングに比べ少ない傾向。
ハックル自体のクオリティはホワイティングに及ばないイメージ。
ストークはやや硬め、ファイバーは細め。
繊細で個性的な天然色が魅力な分、ケープの個体差が大きいようです。
グレードは「ホワイティング」には無かった「ゴールド」が頂点となり、以下シルバー、ブロンズ、プログレードと続きます。
昔はプラチナもあったようですが、現在のカタログには確認できません。
AMERICAN
「アメリカン」は、もともとはデシーバーやストリーマーなどのために改良されてきた品種です。
そのためかストークは腰が強く短い、ファイバーは長くしなやかな張りがあるといった特徴があります。
使い勝手としてはインドケープなどに近いものになりますが、フックサイズ10番~4番の大きめのトラディショナルパターンや北海道などでよく使われるビッグドライ用にはぴったり。
グレードは1種類のみ。
Coq de Leon
「コック・デ・レオン」。
スペイン原産のこの品種の最大の魅力はパルドと呼ばれる班模様。
その模様に加えてファイバーの光沢、艶、高い透過性が加わり、非常に虫っぽく見えます。
ただドライフライ用としてはファイバーが長過ぎて、小さなフライはそのまま使いにくいのが残念。
ダビングツイスターを使ったり、ダイレクトハックリングをするなどの工夫が必要です。
テイル材としては最高で、ケープ以外にテイリングパックとして小分けされたものが発売されています。
1グレード。
HISTRIC
ホワイティングの歴史のところでも触れたヒーバートの元を辿ると行き着くダービーダン系。
「ヒストリック」はそのダービーダン原種からほとんど手を加えてないそうです。
そのためか、全体の質感や色合いは、工業製品的ではないナチュラルさを持ち、ある意味枯れた感じの古めかしいハックルです。
カラーは当然すべて天然色。
ただ、原種に手を加えてないと言ってもストークの硬さ、ファイバーの張りと密度はやはりジェネティックハックル。
さすがに「ホワイティング」と比べると、ハックル自体の長さは劣りますが、ホフマン時代のものと比べても遜色ないレベルとのこと。
現在のプログレードより少し短い程度らしいです。
こちらもグレードは1種類のみ。
High&Dry
もともとはコマーシャルフライ用として扱われていたシリーズで、その名の通りドライフライ用のハックルが多く取れる「ハイ&ドライ」。
ハックル自体のクオリティとしては、ヒーバートとホワイティングのちょうど中間あたり。
ヒーバートよりファイバーは太く密度も高め、またストークもしなやかで巻きやすいようです。
また、ケープも比較的大きめ。
そのためか取れるハックルの長さの範囲が広いというメリットがあります。
近年のホワイティングは品種改良が進み過ぎたのか、小さいフック用のハックルがたくさん取れるようになった分、大きめのハックルが減っているようです。
その点、フックサイズ16番以下から8番以上のハックルが取れるこのハイ&ドライは、大きめのサイズで練習したい初心者には重宝するかもしれませんね。
フライフック適合表
それぞれのハックルから、どれくらいのフックサイズの羽が取れるのか換算表がありました。
おおよその目安になると思います。
最後に
以上、「スペイ」、「ブラマ」、「4B」以外の現行ラインナップをまとめてみました。
こうして見てみると、各製品、違った傾向があるものですね。
自分にはハイ&ドライがいいように思えてきましたが、1枚も持ってない。
今度ショップに行った時に探してみようと思います。
こうしてハックル沼にハマっていくわけですな。