今年の夏休みは二部構成。
前半はコロナ禍以来、まともな旅行ができず鬱憤が溜まっていた子供たちのため、3泊4日のキャンピングカーツアー。
富士急ハイランド、フォレストアドベンチャー、ヘブンスそのはらでの星空観測、千畳敷カールでの登山に尾白川での川遊びと目一杯詰め込んで接待してきました。
旅の締めはクレーンゲーム台数日本一という「エブリディとってき屋東京本店」。
YouTube世代が本当に行きたかったのは埼玉のゲーセンだったというのはちょっと悲しかったですけど。
そして後半は自分の夏休み。
行き先に悩んだ結果、ヤマトイワナを求めて、一人、南アルプスの野呂川へ行ってきました。
家族旅行から帰った翌日、通ったばかりの中央道をまた西へ向かいます。
目的地の仙流荘駐車場へ着いたのは午前1時過ぎ。
すでに駐車場にはかなりの車が停まっていて、深夜なのに多くの人が起きているのがわかりました。
日付が変わってこの日は8月11日の山の日。
ここから北沢峠まではバスでの移動になり、かなりの混雑が予想されましたが、この時はまだ今の登山人気を甘く見てました。
山の日に山へ行ってはいけません。
目が覚めた時にはすでにバスチケット売り場は長蛇の列。
5時前に並んだのにもかかわらず、なんと実際にバスに乗れたのは6時半でした。
この時点でだいぶ精神を削られましたが、天気予報を見ると翌12日は朝から雨に変わっていて、おまけに台風まで。
2泊3日の予定も短縮せざるを得ず、出鼻をくじかれるスタートとなってしまいました。
北沢峠までは約1時間の道のり。
バスを降りたら、目指す両俣小屋までは野呂川出合を経由してコースタイム3時間半の林道歩きです。
以前なら山梨側の広河原から野呂川出合までバスで行けたんですが、令和元年の台風19号による災禍のせいで通行止めの状態がずっと続いているため、北沢峠から歩かざるを得ない状態です。
色々あって朝方は少しモヤモヤした気分でしたが、眼下を流れる川を眺めながら林道を歩いているうちに休暇を楽しめる気分になってきました。
行程にはキツいところは一切なく、穏やかなアップダウンが続きます。
幸いこの日は好天が続きそうだったので、遅れを取り戻すべくテン場までの道を急ぎます。
10時過ぎに両俣小屋へ到着。
バス停の状況から混雑を覚悟していましたが、この時点で先行者は二人だけ。
あの大量の人間はほぼ全て南アルプスの山々へ登頂に向かったわけです。
近年の山人気恐るべし。
ここのいいところは先行者がいつどこへ入ったかわかるところです。
ちょうどこれから帰るところというルアーマンと話すことができ状況を教えてもらえました。
その情報を受けた後、サクッとテントを張って沢へ向かいます。
どこへ行ってもイワナはいました。
瀬にも淵にも。
落ち込みをジャンプして登ろうとしているイワナも見ました。
そして、なによりドライフライに反応してくれます。
ただフッキングしない!
最初は自分のアワセが下手なんだと思いました。
それが4回、5回と空振りを重ねるうちに、いくらなんでもこれはおかしいぞ、と。
フライがあってないのか、ドラッグがかかっているのか。
理由はわかりませんが、とにかくパシャっと水面に出てるヤツの口にフライは入っていない。
後で小屋で色んな人と話しても、皆、口を揃えて「出るけど乗らない」と話していました。
かなりスレているようです。
それでも、魚はたくさんいるし出るので、中にはフライを食ってくれるヤツもいます。
最初の1匹は小さくて、明らかにヤマトイワナとは呼べない魚体でしたが、苦労した分、嬉しさもひとしおでした。
その後、同じように「出た!食わない!」を続けながら、4匹ほど釣ることができました。
ただ、程度の違いはあれ、どれもニッコウイワナの血が混ざったと思われる魚体だったのは残念。
それに川にいる魚の数を考えたら間違いなく貧果と言うところです。
でも、上手い人であれば釣果は全然違ったろうなとわかるところがフライフィッシングの本当に面白いところ。
フライの選択、落とし方、流し方。
自分の未熟さを歯痒く思う気持ちがある一方、もっと腕を上げてまたチャレンジしたいという意欲も湧いてきました。
午後3時を過ぎ、夕立ちの可能性が高い時間帯となったところで引き返すことにしました。
初心者あるあるで、かなりの距離を進んだと思ってましたが、下ったらわずか20分程度のものでした。
思ったより早く戻れてしまったので、小屋の近くでまたロッドを振ることに。
多くの人が通ったはずの場所なので、あまり期待せずに落とした16番のイワイイワナ。
そのフライに派手な音を立てて出たとか思うとすぐにロッドに重みが伝わります。
無事、ランディングできたのは求めていた朱の斑点が鮮やかなヤマトイワナでした。
腹のオレンジに白点のない滑らかな魚体。
純粋なヤマトかどうかは遺伝子解析でもしない限りわかりませんが、自分の求めていたのはまさにこの姿です。
車で往復8時間、バスと徒歩でさらに8時間。
コスパを考えたら馬鹿みたいですが、この1匹で全ての苦労が報われた気がしました。
とりあえず今回の目的は達成できたのでテントサイトに戻りました。
イブニングもやるつもりでしたが、一度、落ち着いてしまうと再びロッドを振る気分にならず、結局、小屋の前を流れる川でちびちびと酒を飲みながらライズを眺めているだけでした。
すっかり暗くなった頃にはちょうどよく酔いも回って、シュラフに潜り込むとすぐに眠りに落ちました。
夜はかなりの雨が降った様子。
明け方には雨は上がりましたが、台風が近づいており13日はバスが止まるかもという小屋の人の話を聞いて、後ろ髪を引かれながらも予定を大幅に切り上げて帰路につきました。
時間と労力は必要なものの、特別な沢登りスキルなどがなくても源流の釣りが楽しめる野呂川。
黒部同様、確実にサカナがいる貴重な場所です。
また訪れたいと思うのは当然として、それまでにしっかり腕のほうを磨いておかなくては。