ロングロッドのメリットとデメリット

シングルハンドフライロッドの番手と長さの関係は、ある程度スタンダードと言えるものがあります。


3番以下なら8ft前後まで。

4番なら8.6ftまでが多い。

5番以上は番手がある程度上がっても9ftまでがほとんどです。

むしろ12番とかは短くなる傾向。


そうしたスタンダードレングスを超えるロングロッドは使いどころが限られ、局所的、専用的に使われているイメージ。

ヨーロピアンニンフィングなどはその典型ですね。


日本の場合、渓流でのフライフィッシングが好きな人の多くはドライフライが中心です。

ニンフの釣りは、どうしてもドライがダメだった時の保険というかサブ的な扱いになりがち。

船釣りなんかと違って装備が限られる渓流においては、ニンフィングのためだけに10ftのロッドを持ち込む余裕はありません。

通常は、7ft半前後のロッド1本しか使わないはずです。


ただ海外ブランドのロッドでは、ユーロニンフ専用以外でも5番以上のロッドでけっこう10ftという設定があります。

ロッドの軽量化に伴い、その数はけっこう増えてきている様子。


そうしたロッドはどういったケースでニーズがあるのか。

使い所としてはどんなところなのか。

ロングロッドのメリット、デメリットから考えてみました。


メリット

・ディープウェーディング時にフライが水面にチップしにくくなる

・飛距離が伸びる

・メンディングしやすい

・ロールキャストがよりしやすくなる

・長いリーダーを使いやすくなる

・手前の早い流れをかわすことできる

・アワセの際、ティペットのスラックを速やかに取れるのでフッキングが良くなる


デメリット

・スイングウェイトが重くなる

・障害物のあるところでは取り回しがにしにくい

・プレゼンテーションの精度は下がる

・ティップのブレが収まるまで時間がかかる


こう見るとけっこうメリットのほうが大きいのでは。


とりわけ理論上、飛距離が伸びるはずだというのは目から鱗でした。

ルアーやってた時は、ロングロッド=飛距離が伸びるという意見に懐疑的でしたが、フライキャスティングでは確かにそうかなと。

9ftロッドを持って30センチ高い台に乗って投げるのとは違うわけです。


「ロングキャストはロングストロークで」というのは故メル・クリーガー氏の言葉とのこと。


ロングロッドは、ティップの移動距離が長くなります。

キャスティングにおけるアークを広く、ストロークを長くするのと同じ作用があり、フォルスキャストのラインをより長く空中で保持できるようになります。

さらに、フォワードキャストへ移るタイミングが多少ズレても、バックキャストで生じたラインの弛みを長いストロークが回収してくれるので、綺麗なループが作りやすくなる。


ただこれはティップコントロールを適切にできての話。

手元の僅かな動作が、よりティップに増幅されて伝わることを考えると上級者向きと言えるかもしれません。


マイナスの部分について。

フライキャスティングの特性上、スイングウェイトが重くなるというデメリットは大きい。


ロッドが長い分、作用点が遠くになります。

梃子の原理で、支点にかかる負荷、すなわち手元に伝わる負荷が大きくなる。

つり人社「CONTROLLED FLY CASTING」より。
キャスティングの理論を学ぶには最適な本だと思います。

9ftならコントロールできても、10ftだとパワー不足で扱いきれないということも考えられます。

やはりそれなりの筋力は必要になりそう。


また、ティップのブレへの対処などを考えても、10フィートのロングロッドは、やっぱりある程度フライフィッシングに熟練した人が使いこなしてこそ武器になるのかなと感じました。


ロングロッドの使いどころ

キャスティングの面から考えられるのは、湖での釣り。

腰までウェーディングしたり、ポイントが遠い場合にロングキャストが必要なケースで使い勝手が良いと思われます。

海フライでも、足場が高い堤防では長いロッドのほうが扱いやすそう。


また、ニンフなど沈める釣りに限って言えば優位性は確かですね。

リーチの長さから、フライラインを水面から離してコントロールしやすくなる。

アウトリガーニンフィングとかルースニングとかではそのメリットは大きい。

北海道では活躍の機会が多そうだなって思います。


決して必要不可欠とは言えないものの、あったら楽しみが増えそうなロングロッド。

多摩川のマルタなんかにもいいんじゃないかなとか、調べてたら欲しくなってきてしまいました。