フライフィッシャーにとってなくてはならないマテリアル、ハックル。
ハックルと一言でいってもその種類や用途が様々な上、フライフィッシングあるあるで出てくるカタカナがこれまた多い。
なので、自分なりにハックルについて調べたことをまとめてみました。
主にドライフライに多用されるコックネック・ハックルが中心です。
スペイやウェット用についてはまた別の機会で。
ハックル用語
まず最初にハックルに関わる用語をまとめておきます。
ハックル
英語辞典には「鶏が逆立てる首回りの毛、頸羽」とあります。
鳥の羽と言えば「フェザー」ですが、鶏の特定の部位の羽をハックルと呼ぶようです。
ケープ
スキン(皮)ごとニワトリの羽がついているもの。
コックハックル
雄鶏から取り出したケープ。
主にドライフライに使われることが多い。
ヘンハックル
雌鶏から取り出したケープ。
主にウェットフライに使われる。
ネック
首の付け根部分のケープ。
ドライフライ用には雄鶏のコックネックが使われることが多い。
コックネックからは根元の極小ミッジ用から#10以上の大きなフライまで巻けるような羽が取れる。
ほかにも部分によってはテイル材やストリーマーのウイングなどにも使われるなど、様々な用途に使用可能。
サドル
鶏の体の上から下に垂れ下がった均等の長さになっているすだれ状の部分のハックルケープ。
ネック同様、ドライフライにはコックサドルが使われる。
同一サイズのドライフライを巻くなら最もコストパフォーマンスに優れるが、用途としてはネックに比べると限定される。
コックサドルはネックよりストークが細く均一で柔軟性があるため巻きやすいが、ファイバーのハリがなく密度では劣る。吸水性が高い。
ストーク
ハックル一本を取り出したときの真ん中の芯の部分
ファイバー
ストークについている短い毛。ハックリングしてこの部分がフライの一部として見られます。
ウエッブ
ハックルの付け根近くにあるモワモワしている部分。
グレード
その名の通り、ハックルケープの等級を表すもので、このグレードによって価格も変わってくる。
主にストークの長さ、ハックルの量の違いにより決められ、ストークが長いほど、またファイバーが密に生えてるほどグレードが高くなります。
またミッジ用の小さいものは、グレードが高いほど多くなる傾向。
ジェネティックとノンジェネティック
ハックルというと、現在では通常ジェネティックハックルを指すことが多いです。
ジェネティックハックル
ジェネティックハックルとは、フライマテリアル専用としてアメリカで生み出され品種改良されていったもの。
その歴史は1954年にダビー・ダンが養鶏を始めたことから始まります。
現在では主なハックルファームとして、ホワイティング、メッツ、ヒーバートなどがあり、それぞれ独自の特徴を持つハックルを進化させてきていますが、そのルーツとなる系統は一つに集約されます。
現在でもジェネティックハックルの進化は著しく、十年一昔の勢いで改良が進んでいます。
ストークはどんどん長く、ファイバーはさらに短く。
ちなみにジェネティックハックル用の鶏の場合、ケープを取った後の肉を食用にはしないようです。
ノンジェネティックハックル
ノンジェネティックは、系統を管理せず半ば野生に近い状態で飼育された鶏のハックル。
産地によってインドハックルやチャイニーズハックルなどがあります。
ジェネティックハックルと比べて、鶏自体が小さいのでケープも小さめ。
ファイバーは大きめかつ柔らかめで、ストークは短いのが特徴。
ドライフライにはジェネティック一択ですが、ウェットフライ用には向いているほか、ファイバーを毟ったストークをボディー材として使うこともあります。
ハックルのブランドについて
現在の日本ではほぼホワイティングとメッツの2択に近い状況。
タイイングを教えてもらった人に言わせると、とりあえず巻きやすさの点から初心者はホワイティングを買っておけば間違いないとのこと。
ただベテランタイヤーの方ほど、フライの色合いや質感、プロポーションを大事にするので、個性豊かなブランドのハックルの出番も多くなるようです。
以下、各ブランドのハックルの特徴を調べてみました。
ただし、同じブランドの同じグレードのハックルでも生き物由来である以上個体差は当然あるので、必ずしも当てはまらないケースがあります。
その辺りはご容赦ください。
ホワイティング
前進はホフマン社で、そのクオリティの高さは他の追随を許さない。
長くて柔軟性に富んだ細いストークを持ち、ファイバーは密に生えていて短めかつやや太め。
色調についてはマットで濃いめの傾向。
ネックフェザーでもサドルかと思うほど長いため使用可能部分が多く、質に加えて量の面でも他社より頭一つ抜けている。
ホワイティング社のグレードは、プラチナ、ゴールド、シルバー、ブロンズ、プログレードの順になります。
シルバーがホフマンの#1相当だそうです。シルバー以上のものは、ほとんど見かけません
一番下のプログレードでも必要かつ十分な品質です。
ヒーバート
現在のヒーバートは、ホワイティング社が扱っている。
台紙の色が緑なのがヒーバート、赤がホフマン・ホワイティング系統。
ストークの硬さはホワイティングよりは硬め、ファイバーは細めで密度も薄い。
クオリティの面ではホワイティングには及ばないが、ヒーバートの魅力はそのカラー。
ナチュラルカラーが豊富で微妙な色合いと光沢、ファイバーの透明感が特徴。
メッツ
ティムコが代理店なので目にする機会は多いブランド。
ストークもファイバーも張りが強め。
ファイバーは細めで密度もあまり高くない。
ハックル自体は、根元から先端にかけてのテーパーが強いため、一本あたりの使用可能部分が少ないが、スタンダードパターンには適している。
ナチュラルカラーのバリエーションが豊富。
グレードは#1〜#3で、小さいほどグレードが高い。
グレードによる品質の差がけっこう大きい。
コリンズ
プロタイヤーであるチャーリー・コリンズという人が「自分の欲しいハックルがないから」という理由で1980年にはじめたブランド。
科学的な根拠に基づき各鶏を細かく管理しているホワイティングを工場的とするなら、コリンズは農場的で、昔ながらの養鶏にこだわっているため年間生産枚数は2000枚ほど。
厳密な遺伝子管理をしていないので、ストークもファイバーも千差万別でケープごとに異なり、当たり外れがあるかも。
カラーバリエーションもオリジナリティに富む。
ネックとサドルがセットで売っているのも特徴。
グレードは#1〜3で、どれも品質は同じで、数字が小さいほど小さいフライ用のハックルが取れる。
キーオ
ビル・キーオ氏が養鶏するジェネティックハックル。
ストーク、ファイバーとも硬め。ファイバーの密度は薄い。
大きめのサイズのフェザーが多く取れ、その質も良いので、ドライフライのテイル用に向いている。
グレードはやはり#1〜#3で、小さいほどグレードが高い。
スペンサー
ファイバー、ストークとも柔らかめ。
他のブランドよりリーズナブルなので初心者にはありがたいかも。
大きいサイズから小さいサイズまで幅広いサイズ取れフェザーの数も多めなのも初心者にはありがたい。
グレードは#1〜#3。
その他
Eウィング、シャノン、インペリアなどローカルハックルファームもあるようですが、ほとんど情報がありませんでした。
長くなったので、とりあえず今回はここまで。
次はホワイティングというブランドとその製品について紹介していきたいと思います。